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2006年9月 5日 (火)

目黒の庭園美術館を思う

 先だって日本に帰国したとき、目黒の庭園美術館を14年ぶりに訪れたが、とても良かった。思い出の場所だからである。中学の水泳部で一緒だった友人が美術かぶれで、彼女に付き合って大学時代はいろいろなところをぶらぶらしたものだが、その中の彼女のお気に入りの場所の一つが目黒の庭園美術館だったのだ。新しく喫茶店やミュージアムショップが出来ていたが、建物本体も庭も当時と全く変わらなくて、とても懐かしい思いがした。

 彼女とは中学時代に部活を共にしたばかりでなく、大学学部時代に、雑司ヶ谷の墓地を歩き回ったり、鬼子母神に行ったり、雑司ヶ谷の旧宣教師館を訪れたり、多摩美の金粉ダンスを共に鑑賞したりして、とても愉快な思い出がある。

 しかし残念ながら現在彼女がどうしているのか、私は知らない。彼女は芸術好きが高じて、大学卒業後しばらくして、フランスに遊学した。フランスに遊学して一時帰国したとき会ったが、その後私は院を出て中国に赴任になり、そのまま会っていない。共通の友人もいるのだが、その友人も把握していないようだ。別れたときに気まづかった部分も多分影響しているのだと思う。一時帰国の際に、私が「フランスはセンスが良くて素敵な国でうらやましい」と言ったところ、彼女はとても苦い顔をしていた。その後私も経験することとなるが、異国での価値観の違いに彼女は苦悩していたのではないかと想像する。特に憧れであった国であるから苦悩はひとしおだったことだろう。彼女と連絡が取れなくなってしまったのは残念だが、しかし楽しかった思い出があるので、それでいいと思っている。

 庭園美術館はアールデコを取り入れた芸術作品のような建物で、いつ行ってもロマンチックな気分になれる。妄想肌の私としては、例によって貴夫人になった気分でソファーでゆったり休み、そして歩き回るのである。庭園美術館の係員さんもたいしたもので、環境に感化されるのだろうか、特に中年のご婦人の係員の方がやけに丁寧な言葉使いで且つ親切に立ち回ってくれるので、阿呆な私は舞い上がり、ますます気分が貴婦人化してしまう。やっぱり丁寧に扱われると気分もいいしね。誰が見ても付け焼刃だってわかるのに、皇族の紀子様チックな微笑を浮かべ、丁寧に挨拶し、ついでに美術館の美しさについて、係りの人にご意見まで述べてしまう。「その付け焼刃な、ざます言葉はやめて頂戴」と、娘が見たら笑うことであろう。全く我ながら、ちゃんちゃらおかしいし、客観的にみたらさぞかしこっ恥ずかしいことだろうなあと思うが、こんなことで気分が高揚できるのなら、お安い限りである。

 庭園美術館のご案内によると、夜の展示、立食パーティー、音楽会など様々なイベントがあるらしい。こういうイベントにドレスアップして参加したら、とても楽しいに違いないし、高揚感に浸れることは私の場合確実である。次回帰省の折には事前にインターネットで行事を調べ、はがきで申し込んじゃおうっと思う。まあ、どっちにしろ、庭園美術館はお勧めです。

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